星の経営者(未刊)

おとなは、いちばんたいせつなことはなにも聞かない。
 
「どんな声してる?」とか「どんな遊びが好き?」「蝶のコレクションしてる?」といったことは決して聞かず、「何歳?」「何人兄弟?」「おとうさんの収入は?」などと聞くのだ。
そしてようやく、その子のことが、わかった気になる。
 
もし大人に「バラ色のレンガでできたすごくきれいな家を見たよ。窓辺にはゼラニウムがいっぱい咲いていて、屋根には鳩が何羽もいるんだ」と話しても、上手に想像することはできない。
だから、こういわなくてはならない「十万フランの家を見たよ!」すると大人たちは、歓声を上げる。「それは素敵だろうね!」
「星の王子様」(サン=テグジュペリ作)
 
 
 
「僕の会社は、30億です」「先日1000万円を突破しました」「売上5倍です」
大人はそう聞くと理解できるけれど、
その会社が大切にしていることを話されると、「この人は、何をいってるんだろう」という顔をするんだ。
 
 
羊羹の餡の堅さをちょうど良くするために、小豆を煮ながらかき混ぜる。
しゃもじをずらした後、鍋の底にのこった小豆の薄い膜が乾くスピードを見ると、火加減がわかる。それでいちばんおいしい羊羹を作れるんだ、といっても、上手に想像することはできない。
 
 
だから、こういわなくてはならない。「このお店で買うには、朝5時に並ばないといけないんだ。もう30年、その行列が途切れたことがない!」すると大人たちは歓声を上げる。「それは、おいしいんだろうね!」
「星の経営者」(未刊 吉井作)